2023年2月 人事労務だより

人事・労務

最新・行政の動き

労働政策審議会の部会は、今年4月から失業等給付分の雇用保険料率を0.2%引き上げ、法律上の原則どおり0.8%にすることを了承しました。引上げ後の雇用保険料率は1.55%となります。

雇用保険財政はコロナ禍前までゆとりがあったため、料率は法律で定める原則よりも引き下げていました。財政がひっ迫するなか、令和4年度はそれまで労使折半で0.2%だった失業等給付分の引上げを決定。激変緩和措置として9月まで0.2%を維持し、10月以降も0.4%引上げの0.6%に抑えていました。

同措置は今年3月で終了し、4月以降は、失業等給付分を原則どおり0.8%とします。労使で折半する育児休業給付分の0.4%と、事業主が負担する雇用保険2事業分の0.35%は据え置きます。全体の保険料率は1.55%で、うち使用者負担は0.95%、労働者負担は0.6%。

昨年12月16日の部会で使用者委員は、「失業等給付や2事業分の残高が枯渇している状況などを考えれば、保険料の原則復帰はやむを得ない」と理解を示す一方、「使用者の負担増加は賃上げマインドを低下させる懸念がある」と指摘。雇用保険財政の安定化に向けて、一般会計からのさらなる組入れを求めました。

割増賃金率の引き上げについて

今回は、2023年4月1日から適用される時間外労働の割増賃金率の引き上げについて説明します。

○時間外労働の割増賃金とは

労働基準法では、労働者を、1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならないと規定しています。これを法律で定められている時間ということで「法定労働時間」といいます。しかし、繁忙期等においては「法定労働時間」を超えて労働させる必要性が生じる場合があり、このような場合は、時間外・休日労働に関する協定届(36協定)を締結し、所轄の労働基準監督署へ届け出ることで「法定労働時間」を超えて労働させることや休日に労働させることが可能となります(※あらかじめ就業規則等で時間外労働や休日労働をさせる旨規定しておく必要があります)。「法定労働時間」を超える労働を「時間外労働」といい、労働基準法において、通常の労働時間の賃金の計算額ではなく、政令で定める割増率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないと定めています。

○割増賃金率とは

時間外労働の割増賃金率は、大企業と中小企業、月の時間外労働が60時間以内であるか60時間を超えているかによって次の表のように定められています。

(2023年3月31日まで)

企業規模月の時間外労働
60時間以内60時間超
大企業25%以上50%以上
中小企業25%以上25%以上

大企業については変更ありませんが、中小企業の割増賃金率が変更となります。具体的には、2023年4月1日から中小企業の月60時間超の割増賃金率が「50%以上」に引き上げられることとなります。大企業は2010年から50%以上に引き上げられ、既に適用されており、中小企業への適用は猶予されていましたが、この猶予期間が終了するということになります。したがって、企業規模関係なく2023年4月からは、月60時間超の時間外労働の割増賃金率が50%以上となります。

○実務上の注意

中小企業については、2023年4月以降、月60時間超の時間外労働を労働者に行わせることで人件費が増加することとなります。従業員数にもよりますが、月60時間超の時間外労働が常態化している中小企業では、この人件費の増加がかなりの重荷となることも予想されますので、このような場合は、今のうちから業務の見直しなどを行い、時間外労働を減らす取組みが必要となります。また、月60時間超の割増賃金率を「50%以上」とする就業規則等の改定も必要となりますので、こちらも準備しましょう。さらに、月60時間を超える時間外労働を行った労働者の健康を確保するために割増賃金の支払いに代えて「代替休暇」を与えることも可能です。「代替休暇」を与えることで、企業としては、割増賃金支払いの抑制ともなりますので、代替休暇をお考えの場合は労働局などのホームページで詳細をご確認下さい。

助成金情報

人材確保等支援助成金 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース

(建設分野)(事業主経費等助成)

建設業における女性労働者の入職や定着を図ることを目的とした事業を行った建設事業主に対して助成するもので、魅力ある職場づくりにつながる取組や広域的な職業訓練の推進活動の実施を目指しています。

【若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業】

若年者および女性に魅力ある職場づくり事業とは、若年労働者および女性労働者の入職や定着を図ることを目的として実施する事業であり、最大1年間の事業計画期間において実施する事業をいいます。

1.建設事業の役割や魅力を伝え、理解を促進するための啓発活動等に関する事業

・現場見学会 ・体験学習 ・インターンシップ 等

2.技能の向上を図るための活動等に関する事業

・入職内定者への教育訓練 ・新規入職者への研修会 ・建設労働者への公的資格の取得に関する講習会 等

3.労働災害予防等のための労働安全管理の普及等に関する事業

・安全衛生管理計画の作成 ・工事現場の巡回 ・災害調査の記録 ・安全衛生大会の実施

・期間雇用労働者の健康診断 等

4.技能向上や雇用改善の取組みについての奨励に関する事業

・優良な技術者、技能者に対する表彰制度 ・雇用改善について優良な取組を実施する者に対する表彰制度 等

5.雇用管理に関して必要な知識を習得させる研修等の実施に関する事業

・雇用管理研修または職長研修の実施

6.雇用管理に関して必要な知識を習得させる研修等の受講に関する事業

・雇用管理研修または職長研修の受講 ・雇用管理責任者講習の受講

7.女性労働者の入職や定着の促進に関する事業

・優良な女性労働者に対する表彰制度 ・女性労働者向けのキャリアパス作成 ・男性の育児休業および短時間勤務の取得を促進する取組み 等

【対象となる経費】

・講師謝金(部外講師に限る):講師の謝金

・コンサルティング料:社会保険労務士等に対するコンサルティング料

・賃金:短期間臨時に雇い入れるアルバイト等の賃金

・旅費:鉄道賃、バスおよびタクシー代等

・バス等借上料:バス等の借上げ料

・印刷製本費:ポスター、パンフレット、リーフレット等の印刷費

・施設借上費:講習会等を実施する場合の会場借上料

・機械器具等借上料:建設機械、機械器具および各種用具類の借上料

・教材費:講習等に使用する教科書代等

・厚生経費:期間雇用労働者に対する健康診断に係る診断料、技術者・技能者や雇用改善に関する表彰等に要する表彰状代

・通信運搬費:郵便料、電気料、電話料等

・会議費:茶菓の代価

・受講参加料:講習会の受講料等

・傷害保険料:現場見学会や体験学習等の参加中に起きた傷害に関する治療費等を補償する保険料

・その他:実費相当額

【助成額】

・中小事業主の場合

支給対象経費の3/5(生産性要件を満たした場合は3/4)

・中小建設事業主以外の場合

支給対象経費の9/20(生産性要件を満たした場合は3/5)

・支給上限額は1事業年度200万円

【手続】

1.計画の届出

事業を実施しようとする日の原則2カ月前までに、必要書類一式を主たる事業所の所在地を管轄する労働局に提出

2.支給申請

3カ月ごとの提出期間に応じて、必要書類一式を主たる事業所の所在地を管轄する都道府県労働局へ提出

*制度の詳細は厚生労働省HP等をご参照ください。