2022年5月 人事労務だより

人事・労務

新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金

今回は新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金について説明します。

○新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の対象者

① 新型コロナウイルス「陽性」の方

② 新型コロナウイルス「陰性」で発熱等の症状のある方

※「陰性」で症状のない方は対象になりません。

①または②に該当する方で、傷病手当金の支給要件を満たしている方

被保険者には自覚症状はないものの、検査の結果、「新型コロナウイルス陽性」と判定され、療養のため労務に服することができない場合、傷病手当金は支給されます。一方、自覚症状がないものの、家族が感染し濃厚接触者になった等の事由において、本人が休暇を取得した場合には傷病手当金は支給されません。

※傷病手当金は、本人が「業務外の理由による傷病等の療養のため、労務に服することができないとき」に給付されるため支給されません。

〇傷病手当金支給申請書の4ページ目(療養担当者記入用)に担当医師から証明が受けられない場合

PCR検査により陽性と判明したものの、自宅または指定されたホテル等の療養施設で待機を命じられ、実際に医療機関を受診した日と休み始めた日が異なるときや、医師が労務不能と認めた日の終了日以降、まだ体調がすぐれず自宅で療養したとき、退院後の自宅療養期間があるときなどは、「療養状況申立書」(傷病手当金用)を添付します。

※療養状況申立書(傷病手当金用)については、全国健康保険協会の各都道府県支部のホームページからダウンロードまたは郵送で取り寄せることができます。
※健康保険組合等に加入の場合は、各健康保険組合により書式が異なりますので、加入している健康保険組合等にご確認をお願いします。
※保健所から新型コロナウイルス陽性に関する証明書や療養に関する指示書の交付を受けている場合は、その証明書・指示書についても添付します。


育児・介護休業法改正の対応について

男女とも仕事と育児を両立できるように、令和3年6月に育児・介護休業法が改正され、令和4年4月1日から段階的に施行されることとなりました。今回は、令和4年10月1日から実施される産後パパ育休(出生時育児休業)について解説します。

○産後パパ育休(出生時育児休業)とは

子の出生直後の時期における柔軟な育児休業として男性の育児休業取得促進のために創設された育児休業であり、次のように定められています。

対象期間 取得可能日数子の出生後8週間以内に 4週間(28日)まで取得可能
申出期限原則として、休業の2週間前まで ※職場環境の整備等の措置について、次の①~③のすべてを労使協定で定めている場合は1カ月前までとすることが可能
① 次に掲げる措置のうち、2以上の措置を講ずること。 ・雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施 ・育児休業に関する相談体制の整備 ・雇用する労働者の育児休業の取得に関する事例の収集および当該事例の提供 ・雇用する労働者に対する育児休業に関する制度および育児休業の取得の促進に関する方針の周知 ・育児休業申出をした労働者の育児休業の取得が円滑に行われるようにするための業務の配分または人員の配置に係る必要な措置
② 育児休業の取得に関する定量的な目標を設定し、育児休業の取得の促進に関する方針を周知すること。
③ 育児休業申出に係る当該労働者の意向を確認するための措置を講じた上で、その意向を把握するための取組を行うこと。
分割取得2回まで分割して取得可能 ※産後パパ育休を2回に分割して取得する場合は、出生後8週間のうち、いつ休業し、いつ就業するかについて、初回の産後パパ育休の申出の際にまとめて申し出ることが必要 ※まとめて申し出ない場合には、事業主は2回目の申出を拒むことができるとされている
休業中の就業労使協定を締結している場合に限り、労働者が個別に合意した範囲で就業することが可能 ※労働者が休業中に就業することを希望する場合は、産後パパ育休の開始予定日の前日までに以下を申出
① 就業可能日
② 就業可能日における就業可能な時間帯(所定労働時間内の時間帯に限る)その他の労働条件 ※事業主は、就業希望の申出がされたときは、次に掲げる事項を速やかに労働者に提示
 ① 就業可能日のうち、就業させることを希望する日(就業させることを希望しない場合はその旨)
 ② ①の就業させることを希望する日に係る時間帯その他の労働条件

※1 雇用された期間が1年未満の労働者、申出の日から8週間以内に雇用関係が終了する労働者、週の所定労働日数が2日以下の労働者については、労使協定を締結することで、対象外とすることが可能です。
※2 休業中の就業について、事業主の提示に対して、休業開始予定日の前日までに労働者が同意を行った範囲内で就業させることが可能となります。
※3 休業中の就業について、事業主は、労働者の同意を得た場合は、同意を得た旨と、就業させることとした日時その他の労働条件を労働者に通知する必要があります。


身近な労働法の解説

 ―健康情報取扱規程の策定―

労働安全衛生法104条3項に基づき、労働者の心身の状態に関する情報を適正に管理するために、事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための必要な指針(平30・9・7公示1号、令4・3・31公示2号)が公表されています。今回は、健康情報取扱規程の策定について解説します。

1.労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針

事業場において、労働者が雇用管理において自身にとって不利益な取扱いを受けるという不安を抱くことなく、安心して産業医等による健康相談等を受けられるようにするとともに、事業者が必要な心身の状態の情報を収集して、労働者の健康確保措置を十全に行えるようにするためには、関係法令に則った上で、心身の状態の情報が適切に取り扱われることが必要です。

そのためには、事業場における心身の状態の情報の適正な取扱いの明確化が必要です。指針では、心身の状態の情報の取扱いに関する原則を明らかにしつつ、事業者が策定すべき取扱規程の内容、策定の方法、運用等について定めています。

また、指針で示す原則を踏まえて、事業場ごとに衛生委員会または安全衛生委員会を活用して労使関与の下で、その内容を検討して定め、その運用を図る必要があります。

2.心身の状態の情報の取扱いに関する原則(要旨)

指針では、取扱いに関する原則を定めています。策定の参考にするとよいでしょう(詳細は指針参照)。

(1)心身の状態の情報を取り扱う目的

労働者の健康確保措置の実施や事業者が負う民事上の安全配慮義務の履行が目的であり、そのために必要な心身の状態の情報を適正に収集し、活用する必要がある。

(2)取扱規程を定める目的

心身の状態の情報が、(1)の目的の範囲内で適正に使用され、事業者による労働者の健康確保措置が十全に行われるよう、事業者は、当該事業場における規程を定め、労使で共有することが必要である。

(3)取扱規程に定めるべき事項

心身の状態の情報の適正管理の方法など、具体的には9項目が考えられる。

(4)取扱規程の策定の方法

衛生委員会等を活用して労使関与の下で検討し、策定したものを労働者と共有することが必要である。衛生委員会等の設置義務がない事業場(小規模事業場)は、必要に応じて安衛則23条の2で定める関係労働者の意見を聴く機会を活用する等により、労働者の意見を聴いた上で策定し共有することが必要。

規程を検討または策定する単位については、企業・事業場の実情を踏まえ、事業場単位ではなく、企業単位とすることも考えられる。

(5)心身の状態の情報の適正な取扱いのための体制の整備

心身の状態の情報の取扱いに当たっては、情報を適切に管理するための組織面、技術面等での措置を講じることが必要である。

(6)心身の状態の情報の収集に際しての本人同意の取得

取り扱う目的および取扱方法等について、労働者に周知した上で収集することが必要である。

(7)取扱規程の運用

(8)労働者に対する不利益な取扱いの防止

労働者の健康確保措置および民事上の安全配慮義務の履行に必要な範囲を超えて、当該労働者に対して不利益な取扱いを行うことはあってはならない。

(9)心身の状態の情報の取扱いの原則(情報の性質による分類)

(10)小規模事業場における取扱い

衛生推進者に取り扱わせる方法や、 規程に基づき適切に取り扱うことを条件に、取り扱う心身の状態の情報を制限せずに事業者自らが直接取り扱う方法等が考えられる。


助成金情報

人材確保等支援助成金(テレワークコース)

中小企業事業主が、在宅またはサテライトオフィスにおいて就業するテレワーク勤務を制度として適切に導入・運用を実施した場合および導入後引き続きテレワーク勤務を実施し従業員の離職率低下に効果を上げた場合に支給される助成金です。令和4年4月1日改正で、テレワークをしやすい風土づくりのために企業トップからの発信などの取組みをすることが要件に追加されました。

【申請の流れ】

実施計画①テレワーク実施計画の作成
②労働局の認定
機器導入等助成③テレワークを可能とする取組の実施
④実施計画の認定日から6カ月以内の、任意の連続する3カ月間(評価期間)にテレワークを実施
⑤支給申請
目標達成助成⑥上記評価期間の初日から1年後の3カ月間を評価期間としてテレワークを実施
⑦支給申請

【主な支給要件】

Ⅰ 機器等導入助成

・新たにテレワークに関する制度を規定した就業規則または労働協約を整備すること

・テレワーク実施計画認定日以降、機器導入助成の支給申請日までに、助成対象となる取組みを1つ以上行うこと。

①就業規則・労働協約・労使協定の作成変更、②外部専門家によるコンサルティング、③テレワーク用通信機器等の導入運用、④労務管理担当者に対する研修、⑤労働者への研修

・対象労働者全員が評価期間に1回以上テレワークを実施、または、対象労働者が評価期間にテレワークを実施した回数の週平均を1回以上とする。

・テレワークの実施促進に向けて、企業トップからのメッセージ発信等、テレワークをしやすい職場風土作りの取組みを行うこと

Ⅱ 目標達成助成

・評価期間(機器導入等助成)後1年間の離職率が計画提出前1年間の離職率以下であること

・評価期間(機器導入等助成)後1年間の離職率が30%以下であること

・評価期間(目標達成助成)に1回以上テレワークを実施した労働者数が、一定の人数以上であること

【支給額】

※支給対象経費について(項目ごとに上限あり)

就業規則、労働協約、労使協定の作成変更費用、外部専門家のコンサルティング費用、労務管理担当者への研修費用、労働者への研修費用、テレワーク用通信機器の導入運用費用

詳細は厚生労働省HPをご参照ください。

職場適応援助者助成金~企業在籍型職場適応援助者による支援

社内に企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)を配置し、雇用する障害者の職場適応に向けて援助を行った事業主に支給される助成金です。

【職場適応援助者(ジョブコーチ)とは】

障害者の職場適応に向けて、障害者と職場それぞれに対してアドバイスを行います。以下の3つの形があります。

① 配置型職場適応援助者:地域障害者職業センターに所属し、事業所に出向いて支援を行う

② 訪問型職場適応援助者:社会福祉法人等に所属し、事業所に出向いて支援を行う

③ 企業在籍型職場適応援助者:事業所の従業員が養成研修を受講して職場内の障害者に支援を行う(※本助成金受給にあたっては常用雇用労働者であることなど一定の要件あり)

【対象障害者とは】

(1)~(4)全てに当てはまる方

(1)①から⑦のいずれかに該当する方

①身体障害者 ②精神障害者 ③知的障害者 ④発達障害者 ⑤難治性疾患のある方

⑥高次脳機能障害のある方 ⑦①~⑥以外の障害者で地域障害者職業センターが作成する職業リハビリテーション計画のある方

(2)常用雇用労働者(1年超の雇用が見込まれる雇用保険被保険者等)

(3)当該対象障害者のための支援計画がある方

(4)本助成金のうち訪問型職場適応援助者による支援対象者として現に支援されていない方

【支給対象となる支援内容】

支援計画に基づいて実施される次の①から④のいずれかの措置

① 支援対象障害者と家族に対する支援

② 事業所内の職場適応体制の確立に向けた調整

③ 関係機関との調整

④ その他の支援(地域障害者職業センターが必要と認めて支援計画に含めた支援)

【支給額】

①と②の合計額

① 下記表の一人あたり月額×支援が実施された月数(上限6カ月)

② 企業在籍型職場適応援助者養成研修受講料の2分の1

※受講料全てを事業主が負担し、かつ研修修了後6カ月以内に初めての支援実施